所信表明「友愛」を末永く存続させていくために
公益財団法人友愛理事長 鳩山由紀夫
平成29年9月15日(金)及び10月27日(金)の2回の理事会において、友愛の公益法人化が論議された。当初、東アジア協同体研究所との統合に向け準備委員会も設置され論議を進めていたが、論議を進めるなか、今後の友愛存続のためには、公益法人とすることが肝要との結論を得た。結果、公益法人としての申請を行い、来年度は、新法人として出発するという方向で、決議された。
これを受けて、鳩山由紀夫理事長より『友愛』紙面に向け所信表明をいただいた。皆様方には、この所信表明文をお読みいただき、今後に向けてのご理解とご協力を賜りたい。
私と交互に友愛をリードしていこうと約束していた弟の邦夫前副理事長が急逝して早くも一年半近くになる。弟は私よりかなり早くから国政で活動しており、したがってこの協会にも早くから携わっていただけに、協会に対して極めてシビアな目を持っていた。本来ならば、祖父一郎がクーデンホフ・カレルギー伯から学んだ友愛思想を、日本の全国津々浦々の若者たちに伝道する使命をもってスタートし、活動してきた協会が、近年はややもするとマンネリを呈し、併せて友愛山荘は、巨額な赤字の巣となっていたからだ。
弟は姉和子評議員長との三人での会食の時などに、十分な機能を果たしていない金食い虫の友愛協会を閉じるべきだと盛んに力説していた。このままではいけないとの思いは、姉も私も同じ気持ちであった。しかし世界が混沌としている今こそ友愛思想を広めねばならないときに、友愛を説いた一郎の孫三人の判断で、還暦を過ぎた組織を閉じるのはあまりにも勿体ないし、申し訳ない思いがした。
そこで私は、私が同じく理事長を務めている公益財団法人東アジア共同体研究所との統合を図ることを提案した。クーデンホフ・カレルギー伯は友愛の理念に基づき汎ヨーロッパ主義を提唱し、それが後に欧州経済共同体(EEC)、さらに欧州連合(EU)として結実した。欧州は実際に不戦共同体となっている。
私は東アジアが二度と戦火を交えない地域になるために、友愛の理念を東アジアに広めて東アジアを共同体にしたいとの思いで、東アジア共同体研究所を四年前に設立していた。友愛理念の普及という意味で共通の二つの団体を統合することに弟たちは同意した。両者の理事会においても、統合を進めて存続を図ることに異存はなかった。
ところが統合の準備を進めていくうちに、スタッフや事務所の所在地と言った具体的な問題もさることながら、大きな課題にぶつかった。それは存続すると決めた以上、友愛の理念の普及を今後五年や十年で打ち切ってしまっては、何の意味もないのに、そうなる懸念はないかと言うことであった。
正直を申し上げて、友愛協会の運営も東アジア共同体研究所の運営も、現在はほとんどが姉などの個人的な寄付によって成り立っていた。私どもはあと五年、十年は健在とは思いたいが、そんなに長く続くものではない。
一方、言うまでもないことだが、友愛精神は鳩山の家の私物では断じてないのだ。逆に言えば、鳩山の私物的存在から解放されなければ、友愛も友愛協会も長く存続しえないのである。即ち、友愛協会は鳩山の血縁から組織的にも財政的にも、徐々に解放されたとしても存続できるようにしておかなければならないし、そのような仕組みを今のうちに整えておかなければならないという大きな課題である。
その仕組みの一つとして浮上してきたのが、公益財団法人友愛の公益財団法人化であった。 そもそも自己の尊厳を尊重すると共に他者の尊厳をも尊重する友愛の理念を普及させ、その目的のために諸事業を行うことは極めて公益性の高いことであると信じる。
これまでの事業を取捨選択し、新しい事業を創設する際に、さらに公益性の観点から考慮する必要があることは当然であるが、友愛に関わる活動である以上は、もとより公益性は担保されているはずである。したがって、鳩山の個人商店的な色彩さえ強く打ち出さなければ、友愛協会の事業は公益法人にふさわしいと言えよう。
そして、何よりも公益財団法人化するメリットは、とくに寄付者が寄付をし易くなることである。今後末永く友愛協会が存続するためには、多くの方々から広く寄付が集まることが肝要である。
あまり知られていないのだが、私が総理のときに「新しい公共」分野を伸ばすために、特定のNPO法人、公益法人、学校法人、社会福祉法人などの公共性を重視する民間の法人に対して、寄付がしやすくなる法律を作った。 例えば公益財団法人に寄付を行うと、そのほぼ半額が税額から控除される仕組みである。優遇には上限があるが、国や自治体に払うべき税金が寄付の半額ほど少なくなると言う優遇策である。公益法人化をすればこの特典が得られるのである。この特典を活用することによって、公益財団法人化された「友愛」が鳩山の私物的存在から解放される可能性が生じると信じたいのである。
友愛の未来を考えたときに、先ずは公益財団法人友愛を公益法人化することに着手したい。そしてできれば来年度は公益財団法人「友愛」としてスタートさせたい。
それまで東アジア共同体研究所との統合問題は一旦棚にあげておき、公益法人化の後に必要性をあらためて考慮し、必要と判断した際には統合を果たしていきたいと考えている。