Activity2019年度の活動内容

OJAB学生派遣 6名の学生が報告書・写真を提出

OJAB学生派遣 6名の学生が報告書・写真を提出

充実の10日間をそれぞれの言葉で

公益財団法人友愛/国際交流事業の一環であるOJAB(エヤップ)への学生派遣事業が実施され、6名が充実の10日間をオーストリアで過ごした。派遣員の学生から寄せられた感想、各人が撮影しキャプションを付けた写真をご紹介します。

研修を終えて
東北大学 3年 阿部 真悠子

「難民ってどの国の人たち?日本にもいるの?」研修への参加が決まるまでの私の認識は、実はこの程度でした。“移民・難民”はどこか遠い国の問題であるように感じ、ニュースで見聞きするだけでその大枠を理解したような気になっていました。しかし、そんな私だったからこそ、この研修への参加を通して得るものがあったのではないか。帰国した今、そう思っています。学び、考え、反省し、そして初めてのヨーロッパを自分なりに味わうことができた、そんな濃密な10日間でした。
外務省でオーストリアが直面する難民問題についてのプレゼンテーションを拝聴し、増え続ける難民への対応が国家の重大な課題として位置づけられ、複数の領域から多角的な支援がなされているということを知りました。決して彼らを排除せず、社会的包括の理念に立ち国の一員として受け入れようという考え方は当事国として理想であると感じると同時に、難民に対しての認識が浅い日本の課題についても考えさせられました。難民の青年たちが暮らす施設で過ごした一日が、私にとって最も思い出深いです。出会う前はどんな人たちがいるのか緊張しましたが、実際に交流してみると、彼らが大人びていて、将来を前向きに見据えて過ごしていることに驚きました。施設では、皆の意見を反映させるための投票箱や学校に通うことが難しい子のための学習空間が設けられるなど、彼らが社会に溶け込むために様々な支援がなされていることを知りました。施設の青年たちは皆仲が良く、私たちのことも明るく迎えてくれて、その温かさが印象深かったです。自分よりも年下の子たちが辛い境遇を背負いながらも努力している姿を見て尊敬するとともに、難民に対する偏見が改められました。
学びに限らず、自由時間にオーストリアの美しい街並み、文化、観光名所を満喫できたことも嬉しかったです。また今回、学年も出身地も境遇も違う5人と一緒に過ごした10日間は、私にとって大きな刺激になりました。5人とも、社会の様々な問題に対して常に当事者意識を持っていて、会話をする中で今まで関心を向けてこなかった事柄に対しても意識するようになり、出発前よりも視野が広がった気がしました。派遣学生の5人をはじめ、普段の学生生活を送る中では決して経験することのできないような貴重な機会を与えてくださった、友愛の皆様、そして現地でお世話になったエヤップの関係者の皆様に感謝の意をお伝えしたいと思います。ありがとうございました。

オーストリアでのかけがえのない出会い
名古屋大学 4年 木本 康瑛

オーストリアで過ごした10日間を通して、オーストリア外務省や在オーストリア日本大使館、OJABが運営する難民施設、高齢者施設と幼稚園が一体となっている福祉施設、職業訓練学校、国連CTBTOなど観光旅行では決して訪れることのできない所を訪問させて頂き、かけがえのない時間を過ごさせて頂きました。
ウィーンはハプスブルク家の時代からの文化遺跡が数多く残っており、とても美しい街並みでした。そして様々な国籍の人々が暮らしており、みなさんとても親切で、多様性の感じられる街でした。
特に印象に残っている訪問地は、難民への支援、活動を行っているOJABのGreifensteinの施設です。そこには、私たちよりも若い16~18歳のアフガニスタンから来た難民の少年達が生活しており、就労の機会を得るために母国語ではないドイツ語を学んでいました。9カ国に囲まれ、東欧諸国からの玄関口になっているオーストリアでは、日本では、あまり意識することのなかった移民、難民問題が身近にあります。
初めて、難民の少年達と出会い、言葉のコミュニケーションは十分ではありませんが、サッカーゲームやスポーツなどを通して絆を深め合い、共に過ごした時間は忘れられません。「君たちのおかげで、今日は本当に楽しい時を過ごせたよ。」と笑顔で言ってくれた後、スマホで家族の写真を見せながら、「いつか、母国に帰って家族に会いたい」と言っていた寂しげな表情は、今も強く印象に残っています。
生まれた国によって、教育、就労の機会が等しく与えられず人生が大きく左右される厳しい現実を改めて感じました。恵まれた環境である日本に生まれたからこそ、こうした問題を心に留めておき、考えていくことが大切であると感じました。
私は、将来グローバルに活躍できる医師になりたいと考えています。日本は先進国の中でも最先端の医療技術があり、社会保険や福祉の制度が充実しています。少子高齢化という大きな課題はありますが、世界平和に向けて日本が世界に貢献できる事は沢山あります。今回の経験を活かし、医療を通して、社会に貢献できる様に努力を積み重ねていきたいと思います。
最後に、OJABの日本メンバーや海を越えてウィーンにも沢山の仲間ができました。プログラムが終了した今も彼らとSNSを通して連絡を取り合っており、これからも互いに切磋琢磨していきたいと思います。素敵な仲間たちに出会えた事が私の宝物になりました。
プログラムを企画運営してくださった友愛事務局、OJAB、そして10日間私たちをガイドしてくれたNikiにはとても感謝をしています。ありがとうございました。

もっと学び、ワンランク上の『これから』へ
名古屋大学 3年 後藤 大智

「初めてのヨーロッパ・オーストリアで学びたい、楽しみたい」、「『これまで』と『これから』を繋ぐ研修にしたい」、そんな思いを持って参加した本派遣事業は、毎日が学びと感動にあふれていました。
滞在中には多くの写真を撮りましたが、アメリカ以外、アジア諸国にしか訪問したことがない私にとって、何気ない街並みがとても新鮮で、すぐにカメラを構えたくなりました。荘厳な建物や石畳の道などの歴史的な景色と、街を走るトラムや電動スクーターなどの近代的な技術のコントラストが映えていました。(※1)ちなみに、お気に入りの景色は、ホーエン・ザルツブルグ城から見下ろした、ザルツブルグ旧市街の街並みです。(※2)
本派遣事業の受入団体・OJABが運営する施設への訪問の中で、最も印象に残っているのは、難民の若者たちを支援している施設です。初めは私たちも彼らもお互い距離をとっていましたが、バレーボールを通じてとても仲良くなりました。(※3)いろいろな言語が飛び交いながら、真剣にプレーして、笑って、汗かいて、ただひたすら楽しかったです。しかし、夜遅くまで一緒に遊んでくれた彼らは、翌朝には私たちよりも早くに学校や仕事へと出かけて行きました。オーストリアに逃れて来られたこと、ご飯が食べられること、学び働けること、それは幸せなことなのだろうか?「難民」という言葉に取り巻く様々な問題の奥深さを知りました。
OJABの施設以外の訪問先で記憶に残っているのは、CTBTOへの訪問です。(※4、※5)折しも訪問日は長崎原爆の日。一時間ほどのショートレクチャーでしたが、難民問題と同様、核実験禁止も、私の関心分野である日本やアジア地域の政治でもより重要なテーマであり、日本の未来を担う一人として、向き合っていくべき課題だと感じました。
本派遣事業の実施にあたり、多くの方々にご尽力いただき、貴重な経験をさせていただけたことを、心より御礼申し上げます。特に、毎日ほとんど休まず、私たちのアテンドをしてくれたOJABにインターン中のニキさん。(※6)頑張って日本語で話そうとする姿に応援したくなりましたし、私たちへの細やかな気遣いに感謝しています。また、一緒に過ごした5人の仲間たちにもとても感謝です。普段聞けない他分野の話を存分に聞いたり、議論したりして、もっと勉強しないといけないなと思わされました。ありがとう。(※7)
仲間たちとの会話にとどまらず、本派遣事業全体を通して、まだまだ自分の知識が足りていない、意見が持てていないということを痛感しました。オーストリアでの経験も、この感想文を書いている時点ではすでに『これまで』です。オーストリアの余韻に浸っていたいところではありますが、『これから』に繋ぐためにも、次なる一歩を踏み出して、より成長していきたいと思います。

「集団」と「個人」
慶應義塾大学大学院 修士1年 成田 葵

旅行から帰ってくると、「どんな国だった?」と友達や家族から聞かれると思います。
オーストリアへ行くのは、私にとって今回が二度目。一度目の時は、芸術の溢れる国だった、と話ました。しかし、今回はなんと形容したらよいのか、言葉に詰まってしまいました。
ウィーンの市内を歩くと、まるで中世にタイムスリップしたような町並み。公園、広場には音楽を奏でる人も多く、アコーディオンであったり、コップであったり様々な楽器を素敵な音色で奏でていました。
今回の旅行では、観光地も行きましたが、国連、老人ホーム、難民施設、オーストリア外務省等様々な場所に訪れ、”うわべ”だけではないウィーンを垣間見ることができました。
この渡航を通して感じたのは、オーストリアは個人を大事にしている、ということです。今回、非常に多くの方と話す機会を得ました。私は、訪問中にお会いした職員の方々に、「キャリア」について積極的に聞くように心がけていました。若いながらも色々な職業を経験されている方が多く、ケーキの販売員をしていた人等前職にもバラエティがあり、皆さん転職を前提に仕事をされていました。また、日本のような一斉に就活を行うシステムがないのは驚きました。
さらに、難民の施設に行った時には、難民を難民という集団としてみるのではなく、個人として、一人の少年として接していると強く感じました。難民施設で働くスタッフは、まるで両親のような存在で、彼ら難民のことをboysと言っているのがとても印象的でした。
オーストリアは、移民/難民が占める割合が高いです。欧州難民危機において、人口比でみると、ドイツ、スウェーデンに次いで3番目に難民を受け入れています。地政学的にも東ヨーロッパと西ヨーロッパをつなぐ役割を果たすオーストリアですが、外務省訪問の際、移民を国力の担う重要なファクターの一要素として話されていたことを覚えています。
日本にいると、しばしば学歴、会社、年齢など、どのコミュニティに所属しているかでその人のパーソナリティを予測することが多いと思います。しかし、オーストリアは、コミュニティの流動性が高く、オーストリア外で育った人が多くきているため、コミュニティを基にパーソナリティを予測することは物理的にも難しい。だからこそ、より個人を大事にしている、個人を重視しなければいけない国なのだな、と感じました。
私は、移民/難民についての理解を深めたいという思いから、オーストリア渡航を決めましたが、移民/難民の状況を学べることができただけでなく、オーストリアを深く知ることによって、日本を客観視できる貴重な機会になりました。この10日間での原体験を糧に、今後の大学院生活を通してアカデミックな面で移民/難民の知見を深めて行きたいと思います。さらに将来的には、俯瞰的な視野を持って社会課題を解決できるよう精進していきます。

愛のある自分の居場所
早稲田大学 2年 森﨑 桃子

今回の派遣では本当に多くの経験をさせて頂きましたが、その中でも特に印象に残る、エヤップが運営する難民の男の子達の家について記そうと思います。
私達はウィーン郊外のグライフェンシュタインにある、難民の15〜18歳の男の子が住む家を訪問しました。職員さんの話によれば、オーストリアでは難民を国に統合して行く事に重きをおき、エヤップのこの施設もその一環を担っています。この家の目的は男の子達が、職員さんとの交流を通してオーストリアで暮らす上で必要となる価値観・マナーを学び、将来この国で生計を立てられるように育てる事です。
私達が訪問した際は、男の子達とバレーボールとUNOを一緒にしながら交流を深めました。男の子達といっても、彼らの中には年齢よりも大人びて見える子も多く、その苦難が顔に刻まれているように感じました。彼らの多くはアフガニスタンからいくつもの国境を越えてオーストリアに辿り着き、祖国やその道のりの中で私達には想像できない苦しみも経験しています。
しかし意外な事に、私が交流する中で強く感じたのは可哀想などという感情ではなく、彼らのたくましさでした。バレーボールをしている時は、アウトかどうかの判断で必ず議論して、それぞれ情熱的に自分のチームが有利な事を主張し、UNOをしている時もチートするな、と言い合いながら熱心にゲームをしました。カッコつけたりせずに、目の前のゲームに夢中になって情熱をかける姿に、私は大きなパワーをもらいました。
勿論、私達が交流をする事ができたのは短い時間であった為、彼らの全てを知った訳ではありません。体験した苦しみから立ち直れない子もいるという話も聞きましたし、必ずしも全員がオーストリアにおいて居場所を簡単に見つけられるわけではないのかもしれません。しかし、いつ自分の国に帰れるのかもわからない、家族と再会できるのかもわからない、という不安定な状況の中で、オーストリアにたどり着き、そこで必要な語学力や技術を身につける事ができ、そして何より、愛のある自分の居場所を得る事は本当に大切な事だと感じました。
グライフェンシュタインという自然豊かで美しい街の中で、これまでの困難、そして異国の全く違った文化・言語に向き合いながら、自分で生計を立てる為に学んでいる男の子たちがいるという事実自体に、理屈を超えた重みがあると、私は思います。暮らしていく為に必要な居場所、愛、技術、そういったものを当たり前のようにそれらを享受してきた私は、その大切さを改めて感じました。直接自分で会いに行き、そこで時を共に過ごす事でしか得られない気づきを得た、難民、という1つの言葉では表わせない彼らの姿を伝える事で、多くの人にとって彼らの存在が身近になればいいな、と思います。最後に、今回この派遣を素晴らしいものにする為にご尽力頂いた友愛の皆様、そして受け入れ先のエヤップの皆様に心から御礼申し上げます。

研修を終えて
一橋大学経済学部 4年 吉田 大志

出発前はエヤップの事業を通じて、オーストリアの現状を理解したいと意気込んでいましたが、研修を振り返ってみると期待を遥かに超える学びがありました。特に難民施設や高齢者住宅、移民・難民向けの語学学校への訪問は、オーストリアがどのように社会課題と向き合っているかが体感でき、同時に日本が今後進むべき道についても視座を深めることができました。
個人的にはウィーンの歴史的建造物の数々にも目を奪われていました。市内を縦横無尽に走るトラムの窓から見える景色は、まるでハプスブルグ家が栄華を極めた時代にタイムスリップしたかのように錯覚させるほど美しかったです。
研修で最も印象に残っていることは、難民施設でアフガニスタンからの逃れてきた少年たちと交流したことです。実のところ難民施設を訪問する前、少年たちに対してどのようにふるまえばいいのかがわからず、緊張していました。しかし、それは杞憂でした。なぜなら、難民施設の少年たちは普通の少年たちと何ら変わらない生活を送っていることを実感したからです。少年たちは皆、学校に通っていたり、仕事に就いていたりと、社会との接点を持っていました。確かに彼らの中には、オーストリア政府から難民として正式に認定されていない人もおり、不安な状態で毎日を過ごしていてもおかしくはないのですが、少なくとも私たちの前では、元気に明るく振舞っていました。
バレーボールで仲良くなった少年に家族と離れ離れで寂しくないのかと聞くと、
「週に1度は電話しているし、施設にはたくさんの友達がいるから、寂しくはないよ」
と、言っていました。不安定な立場であるにも関わらず、毎日を懸命に生きている彼らとの交流を通して、私は大いに刺激を受けました。残り半年の学生生活をただ惰性的に過ごすのではなく、何か目標を持ち、それに向かって努力していこうと決意しました。
オーストリアの外務省でのレクチャーでは、増え続ける移民や難民を排除するのではなく、多種多様なアプローチで、オーストリア社会に溶け込んでもらうことを目指していることを勉強しました。しかし、レクチャーをしてくれた職員の方によると、オーストリアの移民・難民の対する政策はアメリカやカナダに比べると十分とは言い難く、改善すべき部分が残されているそうです。これからオーストリアが移民・難民に対してどのような対応をしていくのか、注目していきたいです。
そして難民施設への訪問は、それまで私がいかに難民に対して偏見を持っていたのかということに気づかされました。難民はメディアで貧しい人々であるとか、治安を悪化させる原因であるという取り上げ方をされる傾向にあり、それが難民との交流に不安を私に抱かせていた元凶でした。この経験から、メディアの情報を鵜呑みにするだけではなく、自らも積極的に調べることが大切であると実感しました。
最後に、エヤップと友愛の関係者の皆様のご尽力があってこそ、今回の研修で実り多き学びがあったのだと思っております。本当にありがとうございました。

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