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2023年度OEJAB派遣員が語る抱負と期待
中央大学法学部2年
巳上 小楽咲
この度は、2023年度OEJAB派遣学生に選抜していただき、心より感謝申し上げます。今回の派遣を通じて、私は難民に対する若者の立場を日独オーストリアで比較し、共生社会の実現に貢献するための第一歩を踏み出します。
昨夏にドイツを訪れた時、若者が主体となって難民排斥を訴えるデモ活動が行われている現状に衝撃を受けました。背景の1つとして、ウクライナからの難民流入による欧州先進国での雇用減少を危惧する若者の増加が挙げられます。
これを踏まえ、同じドイツ語を話し地理的にもよりウクライナに近いオーストリアの若者は、ドイツの若者と互いに影響を与えている可能性があると考えました。そこで、オーストリアでの難民問題に取り組む最前線の活動を視察し、難民に対する現地の若者たちの見方やその社会的背景を理解することを目指します。
事前研修の講義で、民主主義の本質は相対的な合意形成にあり、個々人が責任を持って自由を行使することの重要性を学びました。不安定な世の中に生きる私たちには、時に他人のために自己の自由を制約する寛容さが要求されることがあります。予期せず難民として困難な立場に追い込まれた人々を支えていくためには、社会全体での友愛理念の共有が不可欠だと感じました。したがって、帰国後は今回の派遣で得た知見をもとに、同世代の若者に向けた難民問題における友愛理念の実践活動のあり方を模索していきたいです。
千葉大学医学部6年
金子 紗也佳
この度はOEJAB派遣員に選抜していただき、ありがとうございます。このような貴重な機会をいただき、大変光栄に思います。
私はプライマリヘルスケアや医療格差に興味があり、将来は健全な社会、平和な世界のためにグローバルに貢献できる医師になりたいと思います。そのため、本派遣では社会保障、多文化共生について学びたいと考えています。
大学時代、米英への医学留学や海外医学生と関わる中で、医療と社会問題は密接していることを痛感しました。
医療格差の是正には、まず根本的な社会問題の解決が必要です。そこで、難民施設や国連機関等訪問を通じ、根底となる社会問題について幅広い見解を吸収したいと思います。
また、オーストリアは難民の庇護申請者数、認定率、永住許可率が特に高く、難民を社会の一員として受け入れています。さらに、民が主体となり、難民一人ひとりの社会統合を助けることで誰もが安心して暮らせる国となっています。高レベルな社会保障も合わせ、どのようにそのシステムが実現できているのか、第一線で活躍されている方々から伺いたいです。
これから、様々なバックグラウンドを持つユニオンの仲間と交流し、共に成長し合えることにワクワクしています。
自分なりの「友愛」を模索しつつ、素晴らしい同期と協力して学び、充実した派遣にしたいと考えております。
どうぞよろしくお願いいたします。
九州大学共創学部3年
三浦 愛佳
始めに、2023年度OEJAB派遣員としてご選抜頂き、私個人ではなし得ない、貴重な学びや経験の場を頂きましたことを大変うれしく思います。
さて、12月の事前研修では、講義や講演を通し、本事業に必要な基本的考え方を身につけることができました。議論の中心であった「友愛」という理念について、「個々が自立したうえで相手を尊重して思いやりの心を持ち、自分にできること・相手が必要としていることをする」ことだというように理解しました。
事前研修を終えた今、現地派遣で学びたいことは主に二つあります。
まず、一つ目が、私の興味分野への「友愛」の応用についてです。私は、教育分野で様々な勉強・活動をしており、外国人への日本語教育支援の不足、医療的ケア児や不登校児への教育機会の不足、障害児への画一的な教育に懸念を抱いております。こうした課題は、個人や家庭、国などの単位で解決が図られることが多いですが、私たちが見学するOEJABは、欧州社会基金や寄付を財源とした地域社会の支援団体として移民・若者支援事業を行なっています。
これは、事前研修会で学んだ、「友愛の精神のもと市民同士で構成する社会」を正に具現しており、日本の制度ではどのように運営できるかを考えるためのモデルにしたいと考えております。
二つ目は、外交問題での「友愛」の考え方についてです。研修でお話を聞く中、一つの疑問が湧いてきました。
それは、相手を尊重することで自分の存在が危うくなるとき、周りの人が全て友愛の精神を持っているとは言えないとき、実際取りうる行動は何か、ということです。例えば、戦争や領土侵略、核保有、移民問題などがあたりますが、日本でもこうした問題は間近に迫っています。CTBTO(包括的核実験禁止条約)など、まさに対立を生んでいる問題ついて勉強することで、日本で生きる者として考えるきっかけにしたいと考えています。
様々な知識や考え方を持つ同期たちと、たくさん議論しあいながら理解を深めていけることを期待しています。
東京大学理学部4年
出倉 正啓
午前の研修会では、友愛理念とは何か・友愛理念の歴史とヨーロッパ統合とのつながり・理念の日本への輸入を中心に学んだ。フランス革命の際にはその萌芽がみられた友愛という言葉は、20世紀前半にクーデンホーフ=カレルギー伯が全体主義に対する防波堤としてその理念を唱えることとなる。
友愛は自由・相互扶助とともに自由民主主義の成熟へのキーワードとなり、この思想をもとにした戦間期のパン=ヨーロッパ運動は現在のEU統合の理念の根幹となっている、とのことだった。
この思想を日本に導入した一人が鳩山一郎であり、相互尊重・相互理解・相互扶助をもって友愛であると解釈した。格差が拡大し社会の寛容性が低下してきた昨今の社会において、他人との相互関係を重視する友愛思想は社会の潤滑油となりうる考え方だと思う。NGOやNPOの資金制度の緩和も、この思想が根底にあるということを学んだ。数年前に、共助の強化を訴えた政治家が批判されていたが、今の日本社会・国際社会ともに必要なのが友愛思想にもとづく相互扶助であることを強く感じた。
午後の勉強会では、広島における被爆者団体代表の田中さんからのお話を聞いた。そもそも核抑止という考え方そのものが破綻している、持つもの・強者としての上から目線の言い方だという主張はその通りだと感じた。理想論ばかりではいかないのが国際的な取り決めだが、少しずつでも核を使わない・減らしていく方向に進んでいくためには、デタントの時代に見られたような相互理解が重要なのだろうと考えた。
北海道大学農学部4年
矢野 由佳
この度、OEJAB派遣学生に採択していただきました北海道大学農学部4年の矢野由佳です。貴重な機会をいただき大変光栄に存じます。事前の勉強会では多方面に専門性を持ちつつ、それを社会に還元しようとする崇高な志を持った方々にお会いすることができ、多くの刺激をいただきました。オーストリア派遣のその当日まで自分も知識を深め、より多くのことを吸収できるよう成長したいと感じています。
「友愛」と聞くと何を想像されるでしょうか?誤解を恐れずに申し上げますと、初めにこの言葉を聞いた際、何かの強い信条や思想を表すもののように聞こえました。勉強会において「自由・平等」と並列して「友愛」が語られた際、私は友愛をよりジェネラルな言葉として捉える必要があると感じました。自由や平等は特定の人に限定されるような言葉ではありません。個人や国だけに頼らない、周りの人々と相互に助け合う世の中という文脈の中で「友愛」を用いる際、例えば「共生」や「共助」といった言葉に置き換えると理解しやすいのではないかと考えます。
私はこの派遣員に応募する際、「一方通行にならない教育・支援」を目標に掲げました。これまで大学生として経験してきた教職課程や国際交流を通して、支援される方々の需要や心情を踏まえて支援することの難しさを感じていたからです。また、支援する側にもされる側にもなり得ることを念頭に置き、相互にとって良い交流をする必要があると考えています。このお互いを尊重する気持ちのことを「友愛」と表すことができるのでしょうか。これらの答えとなる鍵をオーストリアで探したいと思います。
東北大学大学院 工学研究科修士2年
大野 誠尚
技術と社会の架け橋として世の中に貢献したい」という想いから、私は理系から総合商社を志し、修士課程修了後の来年から働く予定です。まだまだ若輩者ですが、これまで研究活動を通し自身の専門性(技術)を高めてきました。一方で、その技術を社会に還元する難しさを実感しました。その理由は、「技術」と「社会課題」が一致していないためだと考えています。
このギャップを解消する概念の1つが「友愛理念」であると、昨日の事前研修を経て感じました。フランス革命におけるスローガン「自由・平等・友愛」では、「自由」と「平等」のトレードオフを補完する存在として「友愛」が掲げられています。同様に、「技術」と「社会課題」を補完する存在が「友愛」なのではないかと感じました。「自身を利するだけでなく、国家を利し、かつ社会を利する」ことを可能とする技術・事業開発が重要だと思います。そのような技術・事業開発を行うためには、真の社会課題を把握する必要があります。
真の社会課題を知る方法として、当事者からの1次情報が必要です。友愛の研修プログラムでは、難民救済事業等エヤップ運営施設を訪問し、直接お話ができると伺っています。そのため本プログラムを通し、社会課題の解像度を高めることにより、自身の専門性と併せて「技術と社会の架け橋となる商社パーソン」として今後世の中に貢献していきたいと考えております。