Activity2022年度の活動内容

担当理事が語る現状と展望・更なる発展を目指して

友愛小論文コンテスト
若者の言葉から学ぶ 攪上哲夫

「2021年度友愛小論文コンテスト」上位3名の作品が友愛578号に掲載されている。北京語言大学より選抜され送られてきた15作品を再読した。
コンテストのテーマである「私にとって友愛とは」から、中国の若者が「友愛」をどのように捉えているのか、中国の大学生の言葉から「友愛」の意味、イメージを知ることは、これからの「友愛活動」の方向を探るヒントとなると考える。
小論文コンテストの目的を、「友愛理念の啓発は次世代を担う若者にこそ必要」、「世界の平和に資する若者の育成は必要欠くべからざる事柄」、「日本語を理解できる人材の育成は、友愛理念の啓発に重要な要素」と事業概要で位置付けている。この事業は、「中国国内にある諸大学の協力を得て、友愛についてのレクチャー(講演・ビデオ等)を行い参加学生より小論文を日本語で募り、優秀作品を表彰する」と実施方法が示されている。
2021年度小論文コンテストに参加した大学生は北京語言大学で日本語を専攻している学生である。コロナ禍のためオンラインでの講演会となったが約100名の学生が会場に集い、WEBで聴講している数百名の学生との合同で講演会が開催された。
はじめに茂木理事から「友愛について」の講演、次に鳩山理事長と茂木理事との対談「友愛と脳科学」、友愛理事5名による「私にとっての友愛とは」とスピーチが続き、最後に参加した学生からの質問に鳩山理事長が答える質疑応答で講演会は終了した。この講演会に参加した学生が「私にとって友愛とは」のテーマで小論文を執筆し、中国側審査員の審査結果を受けて、日本側審査委員より優秀作品が選ばれたのである。
この事業は、コンテストという趣旨から優劣を競うことは避けられないが、多くの中国の若者が「友愛」を自身の問題として考えるきっかけになることを期待している。したがって、日本語能力による作品の優劣は必然的にあるものの、自分の言葉で「友愛」を表現するところに意味があると主張したい。以下、15作品から「友愛」をどのように意味づけているか紹介する。なお各作品全体の文章から一部を引用したものであり、作品全体を再読してほしい。事務局に作品集が保管されている。

1.「今回の対談で茂木さんは、友愛と人体とのつながりを科学的に理解させてくれました。私はこれらの科学の人体の知識を理解したことがなくても、私に最も印象的なのは友愛が絆であるということばです。」
2.「中日両国の視点を持った日本語専攻の学生である私たちは、さらに両国の間の懸け橋として、中日友好に力を入れるべきだと思う。」
3.「注目すべきは、茂木先生は一見弱く見えるような絆でも、実は非線形の回路を通ると大きな変化になると述べた。つまり友愛における強い絆と弱い絆・ウィークタイにはそれぞれ価値がある。」
4.「私にとって、友愛とは互いに頼ることだ。」
5.「友愛の根本は和を求めて、客観的な視点でお互いに一致する点を求めて、異なる点は残しておくという目標に努力しているということだと考えています。」
6.「私からみればまず、他人へ愛をあげる前に自分を愛するべきだ。」
7.「私にとって友愛とは、先入観や偏見を持たずにコミュニケーションをとり、お互いを理解し、素直に熱く語り合うことである。」
8.「人と人のつながりが生み出すやさしさこそ友愛の力です。」
9.「お互いに交流をもって理解しあうことが大切であることを心底から痛感した。」
10.「互いに愛し合う兼愛を持つこそ平和的な国関係、友愛的な社会環境が築くことができるのだ。」
11.「私にとって、友愛は虹のような形をもって、人と人、国と国との間にまたがっている架橋の役割を果たしています。」
12.「今の世界はまだ友愛の世界とは言えませんが、理想を唱えた人がいるからこそ徐々に現実に変わっていくのではないでしょうか。私はずっとそう信じています。」
13.「友愛とは、『人種も身分も問わず、善や美を突き詰めようとし、親切で愛のある行い、心より世界中の人々とつながっている』というものでなくてそれはなんだろうか。」
14.「鳩山先生の講演を契機に、友愛精神を改めて学び、これからの世代を担う一若者として歩んで行こうと思う。」
15.「講演会で茂木健一郎先生のおっしゃったように『友愛』は、『あなたと私』が一緒にいること、そして相手に対して敬意を持つことと表しているとともに、世界の調和、平和、共存の理想を考えるときに参照しなければならない精神だ。」

最後に、今年度の友愛講演会は3月に、北京外語大学、北京科技大学2校の学生に対して講演会を開催し、同様の作品コンクールを実施する。日中・中日友好のすそ野を広げるべく準備をしている。

ミャンマー農業発展支援
農場指導者育成の現状と今後の展望 井田安信

2014年から実施しているこのプロジェクトについては、2019年度まで毎年ミャンマーより農業指導者となるべく選抜された研修生を招聘し、カピック(鹿児島県アジア・太平洋農村研修センター)の力を借りて研修を実施してまいりました。
ところが2019年12月からの新型コロナ感染症の影響で2020年度の研修生の受入ができなくなり、2021年二月にはミャンマー国軍によるクーデターがあり、事業実施において往来が妨げられる事態が続いており、国内でできることを中心に事業継続を目指しています。
私たちは、これまでの7年間の農業指導者支援育成事業を通じて、経済活動につながるような(質・量)農作物を生産するには、土壌改良(施肥)の必要性があることを認識しました。そこで、2021年度からは下記の方向性で活動を続けています。

1.肥料を施すことの必要性を、農業従事者が強く認識するよう啓発していく。
2.肥料は、「安全・安価」な「堆肥」が好ましいことを知らせる(購入の必要がない)。
3.身近にある材料(鶏糞・糠・もみ殻・魚の廃棄物・藁・その他)を使って「堆肥」をつくる。
4.堆肥を使うことは、「有機野菜」として商品価値を高めることができる。

1〜4をまとめて、解りやすい(ミャンマー語表記・イラストなど多用して)リーフレットを作成し、ミャンマーの農村地帯で配布することを模索しています。
この度、南埜理事のご協力をいただき南埜理事の母校である東京農工大学の教授の皆さんにご相談させていただく機会を得ました。その結果、多くの教授方から貴重なご意見と現在でもミャンマーに渡航されて農業支援をされているキーマンのご紹介をいただき、この事業の今後の展望が見えてきましたので報告させていただきます。
ミャンマーの現在の状況として、北部は戦乱が続いており日本人が渡航するには適していないこと、中部や南部であれば比較的世情も安定していることが判りました。またミャンマーの土質は、大きく北部・中部・南部で特徴があり、その土地に適した肥料が有効であることを教えていただきました。
まだ計画の段階ですが、東京農工大学藤井名誉教授の協力を得て、ミャンマーのイエジン農業大学の先生を日本に招聘し、日本でミャンマーの農業に必要な肥料や緑肥の勉強をしていただき、ミャンマーに帰ってそれを実践していただくことを検討しています。イエジン大学と協力して、ミャンマー各地域の雑駁な土壌の性質(PH値・成分構成など)の調査や、「緑肥農法」実施の検討(豆は「ムクナ豆」を検討)を進めてまいります。
農業の実践の場として、現地に「友愛ファーム」を設けて、現地で手に入る肥料(緑肥)を使った畑の土地づくりと作物の収穫を目指していきます。現地とのやり取りはスマホを使いオンラインでのやり取りができますし、日本からも収穫時などには現地に赴き、現状把握と指導をしていきます。「友愛ファーム」を拠点として、ミャンマーの近隣農家に農業の実践指導をしていくことを計画しています。
2021年及び2022年度は、友愛ユニオンメンバー、友愛理事・評議員が参加し、在日ミャンマーの方との交流・情報交換会の開催を行いました。在日ミャンマーの方々は、母国に生活費や医療支援物資等を送り支援しています。現地でも、日本でもまだまだ大変な生活をしている方々がたくさんいらっしゃいます。当事業のプロジェクトとして、細々ではありますが、農作物の質・量を増やす一助となるべく、在日ミャンマーの方々と協力し、情報を得ながら進めていきたいと思っています。
皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。

エヤップとの交流・関係深化の先にあるもの
2050年友愛の旅 西川伸起

昨年はエヤップとの関係が再深化するとともに派遣交流事業も順調に回を重ねてきたこと、理事長の巻頭言にも触れられている。ついては、少し思い切って時計の針を進め、タイムマシンに乗って、友愛100周年を迎える直前の2050年の友愛の活動から、エヤップとの交流事業の先にあるものにフォーカスして初夢を見てみようと思う。
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2050年8月、第70期オーストリア交流派遣団が出発した。先日第5期の派遣団の選考が終わったばかりだというのに、70期というのはどうしたことか。本派遣団の魅力が学生の間に伝わった結果、応募者が増加し続け、ついには、2032年からは年2回に分けて募集・派遣するようになったからである。日本からの継続的な派遣は、2017年に始まり、2019年、コロナを挟んで2022年以降と継続しているが、同派遣事業に参加した若者を中心に結成された「友愛ユニオン」は、現在メンバー計410名、52歳を最年長に、新しい友愛の力となって世界中で友愛を体現して活躍している。
海外では国連をはじめとする多種多様な国際機関において要職にて活躍中。NY・ワシントンに十八名の他、思い出のウイーンやジュネーブにも11名が在住しており、友愛ユニオン米国支部、欧州支部を各々形成して折に触れ旧交を温めあっている。エヤップにて勤務しているメンバーも2名おり、一人は難民の受入れ支援業務に、もう一人は職業訓練業務に従事しており、友愛とエヤップの連携をより強固なものにしている。
国内に目を向けてみよう。オーストリアからの若者の派遣は2023年から本格化したが、毎年オーストリア大学で日本語を学ぶ学生が来日し友愛と日本文化を学んでいる。日本滞在中には、友愛ユニオンのメンバーはもちろん、中国・韓国の若者とも広島・長崎・沖縄で意見交換会を実施している。すっかり日本びいきになったものも多く、東京に三名、京都に1名が在住して、受け入れプログラムの実施にも大いに力を発揮してくれている。
エヤップとの国際交流事業の深化は短期の相互派遣事業にとどまらない。2025年にエヤップで一年間の長期就労体験をしたユニオンのKさんの帰国とともに立ち上げた「フラタニティ学生寮(友愛学生寮)」は、エヤップの学生寮運営ノウハウも生きている。女子学生向けの四名のシェアハウスではじめた事業であったが、古い企業独身寮を購入したり、一軒家を改装したりして現在は都内に12、京都に三つの友愛寮を構えるまでに成長した。経済的に進学に悩む地方の高校生にとっての一つの希望となっている。
友愛寮は単なる学生寮ではなく、常設の友愛活動拠点・発信拠点や地域の交流の場にもなっている。2035年に一軒家の寄付を受けて改装した、11名が住む文京区のフラタニティ第6寮は、1階はテラスのあるオープンスペースとなっており、地元の老人、子育て中の家族などの地域の憩いの場所としても機能している。指導棋士の資格を持つユニオンメンバー二名による将棋教室も定期的に開催されている。テラスにつながる食堂は、昼はおしゃれな喫茶店として営業し、朝・晩は寮生への食堂となっている。また、食堂ホールを利用して友愛関係のイベントや勉強会も頻繁に開かれている。選考で優遇しているわけではないが、寮在住を機に友愛に興味をもち、オーストリア派遣に応募選出された学生もすでに八名を数える。老人ホーム併設計画も進行中で、エヤップ交流事業を軸にした友愛思想の伝播が、広がりの循環を起こしている。

*下は、OEJAB派遣員募集のポスター知人・友人にご紹介ください。2023年版は4月以降
(クリックで拡大します)
OEJAB派遣員募集のポスター

友愛 活動詳細
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