Activity2023年度の活動内容

OJAB学生派遣 12名の学生が報告書・写真を提出

OJAB学生派遣 12名の学生が報告書・写真を提出

国連施設の前で 2022年度友愛派遣員第二陣全員で記念撮影
写真前列左から 佐野翔子・龍 舞香・奥山千波・堆 美優・田島桃子
後列左から 弟子丸香歩・藤田脩椰・小倉佑太・田内和久ラザルス・北島貴央・ニケライベッヘナーゼ・女鹿笑奈

充実の10日間をそれぞれの言葉で

公益財団法人友愛/国際交流事業の一環であるOJAB(エヤップ)への学生派遣事業が実施され、12名が充実の8日間をオーストリアで過ごした。派遣員の学生から寄せられた感想、各人が撮影しキャプションを付けた写真をご紹介します。

言い古された言葉「百聞は一見に如かず」
東京医科歯科大学歯学部歯学科5年 小倉 佑太

ザルツブルグ郊外で撮影した写真

・訪問先での経験
今回は政府関連施設からエヤップの難民支援施設、BPIなどの教育現場と外国人職業訓練施設などを訪問しました。中でも印象に残っているのはBPI(※写真2)とCTBTO(※写真3)の訪問でした。まず私がこの派遣事業に応募したときに最も関心を寄せていたのは難民支援施設への訪問です。日本では難民に対する理解が進んでいないことが現状ですが、私は難民という言葉を聞いて苦しい環境下で生き抜いているという印象を受けていました。確かにそうした環境下で困難を強いられている難民が多いのも現実だと思いますが、私が訪問したBPIや難民施設ではこの限りではありませんでした。私たちが日本で受けているのと同等の教育を受け衛生環境の整えられた住居があり、普段通りの食事が用意されているという環境で、他国からこの国にたどり着いた子どもや大人も、そして現地のオーストリア人も皆が同じように生活し、当たり前の暮らしを享受していました。その様子を見て、私はこれまでの自らの既成概念を壊されたような感覚を受けました。「百聞は一見に如かず」という言葉のごとく、今回の派遣が私に与えてくれたものはこうした思い込みを解くためのブレイクスルーであったと感じています。
またCTBTOでは職員の方々と核に対する議論を交わし日本としての立場と世界に求める対応について意見交換を行いました。また世界交渉の場である国連常会(※写真4)を視察し、世界の舞台で活躍する日本人や世界各国の要人の方々の姿を拝見して、強い羨望の念が心の底から湧き上がりました。私もこうした世界の舞台で活躍できるような人間になりたいと改めて強く思い、今回の訪問を通して学んだことを糧に今後の勉学に活かしていきたいと感じました。

・派遣メンバーとの思い出
今回の派遣は2021~2023年度派遣生が同時に派遣されることとなり、過去最多人数での派遣となりました。どのメンバーも個性豊かで志が高く、私にとってはそんな彼らとの日々が何よりもの思い出となっています。訪問先ではそれぞれの強みを生かして質問をし、意見交換や改善策の提案を行うなど非常に有意義な経験を積むことが出来ました。寮でのトラブルや現地の方々とのインターラクティブにも一致団結して取り組み、積極的な対話と交流を行いました。
私は今回の派遣に於いて総団長という重責から強い緊張感を持って参加致しましたが、皆に支えられ助けられていくうちにいつしかそうした緊張もほどけ、一人の派遣員としてこの旅を全神経で楽しむことができるようになっていました。仲間の派遣生全員に感謝の意を表するとともに今後とも意欲に溢れたメンバーとの繋がりを大切にし、相互理解・相互尊重・相互扶助のもとで友愛の精神を育んでいきたいと思います。(※写真5)
最後に今回の派遣に際してご尽力いただきました友愛理事の皆様、事務局員の方々そしてエヤップの皆様に厚く御礼を申し上げて結びとさせていただきたいと思います。

社会との接点・居場所が持つ意味
九州大学法学部卒業 田島 桃子

念願の海外での電動スクーター!自由時間に借り、ウィーン市内を探索。昼間から人々が楽しそうに談笑する美しい公園や路地を駆け抜け、ウィーンの風を肌で感じました。

「社会の一員であり続けるためのサポート」と「長期的観点に基づく未来への投資」。
エヤップの事業への取り組みとオーストリア政府の難民政策から、この二つの理念が掲げられていることを感じ、強く印象に残っています。
エヤップのプログラムは、職業訓練や高齢者施設、難民事業等、多岐にわたりますが、私はどの事業にも通底するのは、「社会の一員であり続けるためのサポート」であると捉えました。具体的には、社会との接点を持つ手段としてのスキルや言語教育だけでなく、その過程で個にならないような居場所・コミュニティを提供しているということです。一例として、青少年教育は、様々な理由で学校に行けなくなった子どもたちが行き場を無くすことなく、再び社会に復帰するために仲間と共に社会生活を持続できる場として機能していました。難民政策に関しても、社会の一員として受け入れ、働いてもらうことで、「脅威ではなく、国の将来にとって益になる」という国の未来を見据えた発想のもと成り立っており、人間は一人では生きていけないからこそ、人と人、社会を繋ぎ、その関係性を持続させるための取り組み・支援が持つ影響力をひしひしと感じました。
エヤップ創始者の方は、活動を始めるにあたり「予算よりも常に理想が先にあった」そうです。まさに本派遣は、社会課題に取り組むエヤップの方々の熱意と思い、そこで懸命に生きる人々の姿に感化され、できる・できないの実現可能性ではなく、自分の思い・問題意識に正直でありたいと再認識させられるものでした。そして、志を同じくする他者との信頼関係がエヤップの事業を発展させてきたという歴史に、実現への道のりは思いと他者との関係性を堅持していれば、おのずと拓けていくものではないか、とも思えたのです。この気付きは帰国後の私の行動に大きな変化を与えてくれています。

この度は貴重な経験を誠にありがとうございました。友愛の皆様、エヤップの皆様に心から御礼申し上げます。素敵な仲間と共有できた今回の経験を今後の原動力として参ります。

12人での不思議で充実の旅
東京医科歯科大学医学部医学科6年 龍 舞香

世界最古の観覧車の窓からの風景。高さはそんなにないのですが、十分景色を楽しめました。1つの箱が20人くらい入れるくらい大きいのも特徴的。

2020年度派遣生として選抜していただきました龍 舞香です。パンデミックが落ち着き、2023年の3月にようやく派遣が実現したことを大変嬉しく思うと共に、派遣実現に向けて尽力してくださった羽中田事務局長、西田理事を始めとする友愛の方々やニックを始めとするエヤップの方々に心より御礼申し上げます。
異例の12人での派遣で、年齢もバックグラウンドもさまざまでしたが、総団長の小倉くんの指揮の元一致団結し、お互いの友愛の精神のもと、充実した8日間を過ごすことができました。
派遣プログラムの中で特に印象に残っているのはエヤップの運営する難民施設や老人福祉施設です。どちらも国やEUの補助金で成り立っており、利用者はほぼ無料で利用できるのですが、日本では考えられないほどの設備やサービスを整えている施設でさすが福祉国家と呼ばれる国だと実感しました。具体的には、難民施設では生徒一人一人にコーチングをつけることができるシステムがあったり、職業訓練はいくつものコースから自分の好きな分野を選んで授業を取り、就職までサポートしてくれたりします。老人ホームでは日本の高級な老人ホームと同じくらい綺麗で広い部屋と豪華な食事、細やかなリハビリテーションを受けることができます。日本もこうなったらいいのにな、と思う一方でこのようなサービスの背景には重い税制や老人にお金をたくさん使うことへの批判などもあり、良い面ばかりではないということも実感しました。
持続可能で理想的な福祉を整備するには国の力だけでは不十分で、エヤップのようなNPO法人や一般企業の参画は必要不可欠であると思います。日本でも友愛の精神を広め、エヤップのような組織がたくさん出来るよう私も尽力していきたいと思います。この度はこのような機会をいただき誠にありがとうございました。

社会を創る“人”を大切に
東京大学大学院工業系研究科卒業 佐野 翔子

通りゆくひとみんなの心を癒すお花畑。景観って大事

オーストリアでの1週間は、私に新たな視点を与えてくれました。特に、印象に残った2点を取り上げたいと思います。
1つ目は、OEJABの教育プログラムが実践的で、生徒一人ひとりにフォーカスしたものであったことです。OEJABの難民に向けての教育施設BPIでは、4つの軸に基づいたカリキュラムが組まれており、知識に留まらず、心身も含めた社会で生きるためのエッセンスが詰まっていました。私自身がコーチングを学び、提供する経験を通じて、心身の健康が幸福度や個人の成長に繋がることを実感してきました。そして、自分自身がやりたい教育の像がより具体的かつ現実的なものに近づいたと思います。オーストリアでの教育プログラムを見て、生徒たちが「生きる」上で必要な自分や他者との関わりを学ぶ場が形になっていることを知り、感銘を受けました。
2つ目は、在オーストリア日本国大使とお話をさせていただく機会を得、水内大使から貴重なお話を伺ったことです。併せて、私たち若者の意見にも真摯に耳を傾けてくださり、それぞれにご意見を頂けたことは特記すべき出来事でした。
国際機関や現地の教育・医療現場への訪問を通じて、参考になる制度やプログラムを数多く学びました。同時に、日本独自の国民性や政府の財政基盤に合わせて、日本なりのアプローチを創出する必要性も強く感じました。社会通念や資金繰りの仕組みなど、何が根本的な課題であり、そのために何をすべきか、行動に繋がる問いを持ち帰ることができたと思います。
最後に、普段とは異なる社会を垣間見た旅ではありましたが、結局はどんな社会も形づくるのは人であり、人を大切にすることがより良い社会に繋がることを再認識しました。
この想いを、目の前でできることから実践し、自分が創り出す未来がより良いものとなるよう努力していきたいと思います。
このような貴重な機会を与えてくださった友愛の事業に、関係各位に心から感謝します。ありがとうございました。

オーストリア派遣を終えて感じたこと
中央大学国際経営学部4年 奥山千波

ザルツブルクの高台からの景色と共に

振り返ると、派遣員として過ごした日々は本当にあっという間でしたが、密度の濃い毎日でした。約1週間で、OJABが運営する職業訓練学校をはじめ、在オーストリア日本大使館、高齢者施設、国連機関等に訪問させていただきました。
応募時に参加動機として挙げていた「難民問題の認識が低い日本が今後進むべき道についても視座を深めること、研修で出会う方々と交流や議論を通して知見を広げながら自分の視野も広げること」という視点から、本研修での気づきを綴りたいと思います。
前者について、諸外国と比べ、難民の認定数・率ともに極端に低いと言われている日本ですが、研修を通して難民認定後の支援方法についても考えさせられました。
本研修で訪れた難民支援施設や職業訓練学校では、オーストリアで職に就き生活していくための様々なプログラムや経済的な支援が充実しているように感じました。ただ、それらをそのまま日本に導入すれば良いという簡単な話でもありません。オーストリアの福祉・社会保障が充実している一つの要因として高額な税制が定着しているからであり、二国間を一面のみで比較するのは難しく、多角的にかつ俯瞰的に全体を見る必要性を感じました。
後者については、まさにバックグラウンドが異なる仲間と出会えるのはこのような機会の醍醐味だと再認識しました。大学や学年の垣根を超えた関係だからこそ、自分にはない他分野の話を聞いたり、将来の進路に触れたりするのはとても刺激的でした。
様々な社会問題は座学だけでは限界があると感じており、難民問題に限らず、これからも実際に現地へ赴き最前線の情報や現状を知ることを重要視していきたいです。最後となりましたが、改めて貴重な機会を与えてくださった友愛の皆様、現地でお世話になったOEJABの皆様に心より感謝申し上げます。

社会のために、世界のために
中央大学法学部政治学科卒 北島貴央

ウィーン国立歌劇場で。鑑賞前に小倉さん(右)とパチリ。

今回のプログラムを通して印象に残っていることを2つご紹介します。
ひとつはOEJABが運営している若者向けのBPI(職業訓練施設)です。
そこで過ごす生徒たちが、一般的な学校と同じように明るい様子が予想外でした。
渡航前の私は「移民」「難民」という単語にただただネガティブな印象を持っていましたが、BPIの生徒や職員たちとの会話から、社会に溶け込めるよう支援する動きもまた活発なのだと学びました。そこでは、オーストリア社会で自立して生きていけるようきめ細かい教育が提供されていました。住環境をはじめに、ドイツ語はもちろん美術・ITなどといった多様な科目が用意され、バックグラウンドの異なる生徒一人一人の希望進路に合わせたコーチング制度もあります。今や人口の25%が外国にバックグラウンドを持つオーストリアですが、良好な治安の根底にはこんな教育支援活動があるのだと知り大変勉強になりました。
もう一つは国連ウィーン事務局でのCTBTOの方々からのお話です。
ご登壇くださった3名のお話の中で感じたこと・学んだことは、世界で何かの合意を取る難しさと、それを目指して尽力することの尊さです。CTBTOは計330箇所以上の計測装置を全世界に配置し、核実験の有無を監視しています。しかし、核実験実施など疑わしい兆候があったとしても、CTBTOには法的拘束力がないことや各国の政治的事情、国連の組織としての予算の都合など、非常に現実的な側面とも向き合っていることを教えていただきました。一社会人として納得するとともに、それでもCTBT発効の先にある核廃絶実現という公益に向けて世界中の専門家が膝を突き合わせて日々尽力されていることが、とても尊く映りました。この光景と感情を決して忘れてはいけないとも強く感じました。
最後に、延期になっても素晴らしい機会をアレンジくださった友愛事務局の皆様、現地を案内してくれたニックたち、そして共に過ごした11人の仲間に感謝します。

ウィーンで学んだ「共生」の道
東京大学教養学部文科一類2年 堆 美優

バベルの塔とツーショット

長かったようで短かった10日間を経て、私はかけがえのない出会いと、生涯記憶に残るような学びの機会に恵まれました。書きたいことは山ほどあるのですが、いくら原稿があっても足りないためここでは一つに絞ってお伝えすることにします。
私は難民問題にかねてより関心を持っており、今回の派遣でも現地で難民支援の実態について学ぶことを目標の一つとして掲げていました。
しかし、現地で実際に見聞し、得られた情報は私の想定をはるかに越えたものでした。
OEJABが管轄する数々の社会福祉事業のうち、私が最も感銘を受けたのが「自国の青年支援」の取り組みです。国内で学校教育などからこぼれ落ちてしまった若者に対し、政府の資金援助のもとで、社会へ、学校への復帰支援を行うというものです。
私はこの活動から、難民支援に通底するオーストリアの信念を学びました。
それは「共生」への飽くなき挑戦です。
背景にあるのは経済的理由など様々ですが、最終的なゴールとして「共生」のビジョンがあり、そこに信念があるから、あらゆる支援活動が可能になっているのだと学びました。
一方で、政府の方とのお話からオーストリアが国として難民の言語支援に力を入れているのが、単なる人道支援ではなく社会経済的合理性の元に成り立っていることも知りました。
日本で「難民支援がなかなか進まないのはなぜか」、を考える時思い出すのが「日本は元来複数の民族が共生することによって発展してきた国である」という在オーストリアの水内大使の言葉です。多くの方との出会いと、いただいた言葉から、私は「共生」について新たな学びを得て、多くを吸収して帰ってきました。
そしてもう私にとって一つ大きな出来事は、今回の派遣で自分が大学入学当初から力を入れて学んできたドイツ語の成果を肌で感じることができたことです。現地で様々な方からお話を聞く機会に恵まれたのですが、その人自身の言葉を理解することができたことに、感動し喜びを感じていました。今回の経験から、大学での勉学の指針も大きく定まり、現在は日本の歴史と人道支援について学び、留学ではヨーロッパにおける共生の歴史と今について学ぼうと考えています。
最後になりますが、今回の派遣を直接・間接的に支えてくださった関係者の皆様に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。この御恩を忘れずに、より良い社会・未来を担う若者の一人として一層励みたいと思います。

車の両輪
東北大学工学部4年 藤田 脩椰

お世話になったニックと記念に1枚。引率する人数も多く本当に大変だったことと思います。ありがとう!

友愛のOEJAB派遣事業が実施され、OEJABや難民受け入れ施設、国連、連邦首相府や大使館等諸機関への訪問の機会をいただきました。友愛やOEJABを始めとする、この派遣事業の実現にあたり尽力いただいた方々に心より感謝申し上げます。
今回の派遣事業を通じて、日本における外国の方の受け入れ姿勢についてより深く考えることができました。訪問させていただいた機関は、独語や職能の習得機会の提供、受け入れ政策の立案・施行等それぞれ相異なる領域において活動されていました。しかしながら、移民・難民の受け入れにおける態度については軌を一にするものを感じました。特に独語や職能訓練の場においては、単に両技能の訓練機会を提供するにとどまらず、これによってオーストリア社会に根を下ろし生活していくための基盤を作っているのだという大きな熱意を感じました。
翻ってわが国の現状を見るに、移民・難民の受け入れに関する議論は未だ成熟を見ず、国としてもどっちつかずの及び腰の側面が強く見られます。もちろん、公共機関における多言語併記の案内の増加等、日本で暮らす際の障害を小さくする取り組みは進みつつあるものの、これを乗り越えるための能力獲得の機会提供についてはまだまだ拡大の余地があると痛感しました。
これを実現するにあたっては、草の根レベルからの議論が重要と考えます。そして今回実際に現場に触れてきた私たちがその議論の口火を切る役割を担い、社会全体における議論のきっかけになれればと思います。
今回の渡航は、私にとって初めての連続でした。初めて訪れる土地でたくさんの人、場所を訪れ様々な生活、ひいては人生の一端に触れることができました。こうした状況に対して素直さと誠実さを持ち、世界を結び付ける人材を目指したいと思います。
重ねてではありますが、今回の派遣の実現にあたり尽力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。

オーストリア派遣を終えて
東京医科歯科大学医学部医学科3年 弟子丸 香歩

介護をされている方からお話を伺いました。

最初に、COVID-19の流行や世界情勢が不安定な中オーストリア派遣という貴重な機会をいただけたことに感謝申し上げます。私にとって初めてのヨーロッパ生活は慣れないこともありましたが、11名の仲間と協力し合いながら多くのことを学びとても充実した8日間を過ごすことができました。
オーストリア研修の目的の1つはOEJABが運営する高齢者施設の見学でした。高齢者の方々は、建設されたばかりの明るく開放的な建物の中でそれぞれの介護レベルに合わせて手厚いケアを受けながら生活されていました。見学中、このような非常に設備が整っている施設に入所するにはどの程度の資産が必要なのだろうと疑問に思い質問したところ、介護費は国で賄われているため希望すれば誰でもこの施設に入居できると説明いただきました。私はオーストリアの福祉の手厚さに驚くとともに、この見学を通して日本の高齢者の方々が穏やかに過ごせるように医療福祉制度についてさらに理解を深めたいと思いました。
次に難民支援施設の訪問です。オーストリアは国民の25%が難民で、難民の方を積極的に受け入れているため、難民の方々が就職・就学をシームレスに受けられるような体制が整えられていました。
高校生の難民の方にお話を伺ったところ、オーストリアは難民に対してドイツ語教育を細やかに行っていること、就職において難民であるから不利になるということがないことが素晴らしいとおっしゃっていました。日本では、難民の方への日本語教育が十分でなかったり、就職先が見つけにくかったりという話を聞きます。それ以前に、難民認定が極端に少ない日本の状況を考えてしまいました。併せてこれから増えていくであろう難民の方を日本で十分に支援するために、語学教育など他の国の制度で参考にできる部分は取り入れられるよう、現地で学んできた私たちが社会に働きかけていきたいと思います。
最後に、出発前から帰国後に至るまで日本からサポートしていただいた友愛の方々、12人という大人数を引率し私たちが困っているといつも笑顔で快く助けてくださったニック、互いに刺激を受けそして励まし合い生涯の友人となった11人の仲間に心より感謝申し上げます。

世界平和への一助となる活動を
東京外国語大学国際社会学部4年 ニケライ ベッヘナーゼ

CTBTOウィーン本部建物内での写真。CTBTOの文字が書かれた小さな旗がテーブルに置いてあったので、行った記念にその旗とパシャリ。

振り返ってみれば、もともとは大学の講義で受けた「平和紛争論」、そして自身のルーツであるイラン国内の状況がきっかけとなって難民問題に興味を持ち、今回の派遣に参加させていただくことになりましたが、派遣後には自身の関心分野以上の学びがあったと考えています。
エヤップの職業訓練所に行った際に、ドイツ語の授業が行われていて、拝見することができました。教室内ではさまざまな国出身の難民の生徒が出席しており、明るく、楽しい雰囲気に魅了されながら、日本で在住外国人向けの「日本語教室」や「夜間中学」といった日本語の教育機関との比較を頭の中で行っていました。先生も生徒も授業に対して熱心で、積極的に参加しようとする姿勢がとても眩しかったです。日本ではなかなかこうした公費による専任の講師のもと日本語を教えるという機会がまだ普及しているとは言い難い状況にありますが、その点こちらの職業訓練所でのドイツ語の授業は高い質と共に生徒1人1人に寄り添った教育が行われていたのを見て、刺激を受けたと共に、強く印象に残りました。
私はペルシア語を話すことができますが、難民出身者の方の中には私と同じイラン人、もしくはイラン出身者も少なくありませんでした。私がイラン人でペルシア語が話せることが分かると、親近感を持ってくれる方も多くいました。オーストリアへの渡航経緯や、イランでは何をしていたかなどを詳しく話してくださり、話を聞きながら私も日本ではなくもしイランで生まれていたら、今ここにいたかもしれないと思うと全く他人ごとには思えませんでした。今回の派遣での経験を踏まえ、何らかの形で社会貢献活動の場で還元し、イランを含め、世界平和への一助となる活動を今後行うことができればと考えています。
最後に、この派遣を主催し、ご尽力いただいた友愛財団、受け入れ先のエヤップの皆様に深く感謝申し上げると共に、派遣を楽しく、有意義なものにしてくれたニックと派遣員のメンバーに改めて感謝の意をお伝えします。本当にありがとうございました。

多様性と個人
名古屋大学情報学部4年 田内 和久 ラザルス

『サン=ベルナール峠を越えるボナパルト』の前で記念写真。

オーストリア派遣では、ÖJABの職業訓練校、国連CTBTO、連邦首相府、日本大使館を訪問するなど、貴重な経験をさせていただきました。これらの経験を通じて、多くのことを学び、新たな見識を得ることができました。また、ウィーン市内やザルツブルクでの観光も印象に残るものが多かったです。本レポートでは、その中から最も強く印象に残ったものを紹介したいと思います。
それは、ÖJABの職業訓練校への訪問です。ここでは、難民として認定された若者たちが支援されています。派遣前には、このような施設が存在していることは知っていましたが、実際に訪れてみると、彼らがただ「難民」として過ごしているだけではなく、新たにオーストリア社会に一人の人間として組み込まれ、自立することができるようなカリキュラムがあることに驚かされました。職業訓練校では、エンジニアリングやプログラミング、芸術など、幅広い授業を受けることができ、個人に合った専攻を選択することができます。個人を尊重し、個人に合った生き方や職業を身につけられるようにするこの取り組みに、私は感銘を受けました。難民として認定されていても、彼らは一人の人間としての人生を送っているのだということを、再認識しました。この施設で、異なる文化を持った人々との交流を通じて、個々人の多様性を受け入れ、尊重する姿勢を育むことが重要だと思いました。私たちは難民の方々を「難民」という集団で捉えがちですが、個々人を尊重して理解することが、難民問題を考えていくうえで重要になってくるのではないでしょうか。
また、ウィーンの美しい街並みやシェーンブルン宮殿などの歴史的建造物を訪れ、名物料理を堪能するなど、非常に充実した1週間を過ごすことができました。本派遣においては、多くの気づきがあり、多彩な経験をすることができました。この場を借りて、本派遣の実施に尽力していただいた友愛事務局、ÖJAB、そして私たち12人を1週間アテンドしてくださったニックに心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

憧れの国への旅を終えて
東北大学医学部医学科4年 女鹿 笑奈

ザッハトルテ発祥のお店、ホテルザッハーにて。モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」を見て、ザッハトルテをいただいて。ウィーンらしさを満喫した1日でした。

日本には、オーストリアと言われてもピンとこない人が多いらしい。西洋芸術が大好きな私にとっては憧れの国だが、帰国後は「コアラ触れた?」「ドイツ寒かった?」などと聞かれることが多かったので、より多くの人に空気が伝わるような報告書にしたい。
まず首都ウィーンは流石の世界遺産、どこを見ても美しく、壮麗さを保ったまま時が止まったかのような景色だった。また私は街の至る所にある双頭の鷲を見るだけで胸が高鳴るほどにハプスブルク家の歴史が好きだ。壮大な宮殿の内部には舞台「エリザベート」の小道具そっくりの華やかな展示物が並び、手入れが行き届いた広い庭園に今なお彼らの圧倒的権力を感じ心が躍った。
とはいえ、この友愛でのオーストリア派遣の目玉は、観光では入ることのできない、OEJAB関連の様々な場所を見学できる点である。印象的だったのは老人ホームと難民支援施設だ。老人ホームは日本でも何度か訪れたことがあるが、それとは比べ物にならないほど明るく開放的な施設だった。しかも登録して順番さえ待てば、かなりの低額で誰でも入居可能だという。日本と同じ少子高齢化状態においても一人ひとりへの細やかな支援に驚いた。また難民支援施設の想像と現実はだいぶ違っていた。日本にいると難民支援といえば短期的なものを想像しがちであるように思う。しかし実際は長期的にこの地で生活することを視野に、言語・文化の教育や資格取得支援がなされていた。労働世代の減少が目立つ今、移民・難民の増加は危機ではなく好機だ、と捉える政府の考え方が色濃く反映されていた。
今回の派遣団は全国から大学も専門も異なる12人が集まった。旅の終盤に訪れた日本大使館ではオーストリアと日本を比較し、日本は今何を目指すべきかについて議論したが、同じものを見ても感じとるものは人それぞれで刺激的だった。大学4年の春休みという人生の分岐点とも言えるこの時期に、皆に出会えたことに感謝したい。

「貴重な集合写真」(小倉佑太団長提供)

友愛 活動詳細
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