Activity2022年度の活動内容

留学日記 私の見たヨーロッパの現状 森崎 桃子

大統領選と政治参加
フランス人は政治や哲学を語るのが好き、そう思って私はフランスに渡航しました。そして実際に大統領選について雄弁に語る友人に出会いました。彼女になぜそんなに関心を持っているのかを聞くと、「私の家ではニュースを見ながらよく家族で政治の話をしていたし、高校生の時から日常的にクラスメイトと議論してきたからだと思う」と答えてくれました。彼女は、強い政治的意見の持ち主で二回目の投票において(フランスの大統領選は一回目の投票で過半数を占める候補がいない場合には上位二名の一騎打ちとなる二回目の投票が行われます。)、マクロン氏もルペン氏も自身の思想に合わないと白紙投票をしたそうです。一方、ジャーナリストを目指す友人は、フランスの若者の政治への意識に危機感を持っています。「今の若い人は昔より政治に関心が薄いから、関心を持ってもらえるような記事を書きたい。」彼女はそう語りました。また彼女は「二回目の候補の二人と思想は合わないが、現在の制度では白紙投票をすると政治的意思としてみなして貰えないからこそ、どちらかに投票しよう、と周りに呼びかけた」と教えてくれました。
そして大統領制自体に疑問を呈する意見もある、と一人の友人が教えてくれました。彼によると、大統領という政治的イデオロギーを象徴する存在がいることは、政治的関心を高めるかもしれないが、人々を分断する事もある、と言う事でした。大統領選をめぐって人々の意見が決裂し、自身の候補以外の意見を解ろうとしない状況は好ましくない、と彼は続けました。
政治に興味を持つ事は、自身や家族、大切な人の将来にも関わることでもあり重要です。一方で、日本とフランスの政治への関心度を単純に比較して批判する事も少し違うと思います。フランスは文化的に政治について議論したり、意見が違う相手にも自分の意見を言ったりすることも良しとする面があります。
一方の日本は、政治についておおっぴらに話す事について消極的になった歴史や衝突を避ける文化も残っています。こうした違いの中でただ批判するのではなく、その違いを踏まえてどこを取り入れどの様な変化を起こしたいのかまで考え、比較する事が大切だと感じました。

アジアとフランス
フランスで一番ショックだったのは、「アジアの歴史は中高で勉強しなかった、勉強しても戦後の歴史だった」、と友人から聞かされた時でした。私や、私の友人は日本で世界史を習い、ヨーロッパの歴史について教養程度には知っている中で、そもそも習わないと言う事に、それだけ注目度や興味がないのか、と少し悲しくなりました。
また、人権の授業で国際人権法について学ぶ中で、「現在の法枠組みは欧米の一部の国がアジアや他の地域を除外して作ってきたものであり、もっと様々な文化を反映したユニバーサルなものになるべきではないか」、と言う批判を取り扱いました。その授業の討論の中では、これ以上多様なものを取り入れると統一性がなくなる為、現状を維持するべきだ、と言う意見も聞きました。また、アジアに関する議論もアジアンディベートとまとめて触れて終わってしまい、アジアの中にある多様な考えや文化が看過されて話が進んでしまう事に大きな危機感を覚えました。
日本にいると、韓国、中国、ベトナム、タイ、インドネシアなどそれぞれの国が違う文化や歴史を持ちながら構成されている事は歴史でも学びますし、感覚としても実感があります。しかし、アジアの歴史を学ぶ機会がなく、さらに距離的にも遠くに位置している欧州の人にとっては、その違いを理解する事はあまりないのだと実感しました。(勿論、個人的に興味があって学んでいらっしゃる方もいました)その分、自国や自分の地域について知らない相手の発言や話し方に、密かに傷つく機会も多くありました。
外交関係を持つ際、ビジネスで取引をする際、友人として交流する際、相手の国や地域について知識を持たないことは、相手の事を傷つけてしまったり、誤解を生んでしまったりする大きな原因になると、身をもって実感したからこそ、自分自身は知る努力を怠らずに続けて行きたいと思いました。(完) 前編は前号

友愛 活動詳細
のトップに戻る