Activity2022年度の活動内容

留学日記 私の見たヨーロッパの現状 森崎 桃子

私は2021年9月から2022年6月までの間、パリ政治学院という、欧州の中でも国際関係論、政治学、法学に強い大学に留学しておりました。
コロナ禍に始まった留学生活、2月からのウクライナとロシアの戦争、5月の大統領選と、欧州そしてフランスが直面する危機に対してどう立ち向かうのか、肌で感じる事ができた9ヶ月間でした。そこで感じた人の想いや自身の体験を記したいと思います。

コロナへの対応の違い
私がパリに到着した時期は、日本ではまだ友人に会うことも躊躇する雰囲気がありましたが、現地では気軽に人に会える日常が戻りつつある事に、まず一番驚きました。また、欧州域内でも移動の自由が確保されており、ワクチンを一定数打っていれば、域内を自由に旅行できたので(一時期それも止められたことがありますが)、アジアでの移動の感覚と欧州での移動の感覚に大きなギャップを感じたことを覚えています。マスクをしないで市内を歩く人達など欧州では人の健康・安全を守る事は大切にしつつも、欧州連合が伝統的に取り組んできた人の移動の確保を重視して政策を実行しているように感じました。
特に欧州の学生と関わり、将来働く場所や勉強を続ける場所を話す上でも、その努力して確保されてきた移動の自由が、彼らの選択肢を大きく広げている事を実感し、それがEUの強みだと感じました。
一方、東アジア地域では、他人を守る事に高い優先順位が置かれており、マスクをする、定められたルールを守る事を徹底しており、マスクをしない権利が主張される欧州とは違う意識を感じます。同じコロナという状況でも、国や文化が違えば人は優先して守るものも変わる、その当たり前にも感じられる真理を強く実感した体験でした。

ウクライナとヨーロッパ
ウクライナとロシアの戦争は学校の休暇中に勃発し、休暇後の授業は、その戦争に一部若しくは全面的に触れて行われました。私のクラスには、ロシア出身の友人もおり、彼ら彼女達にとっては戦争の話をする事は決して心地よいものではない、という話も聞きました。一方で、フランス人の中でもプーチン大統領の思想をロシア人全体の意見と捉えるのではなく、ロシア人のあくまで一部の人達が戦争に賛同していると捉えているという考え方も多くあり、その点も興味深かったです。
全員が敵と捉えるのではなく、ロシアでも大統領と違う考えを持っている人がいると伝わっているのは、SNSにより個人の発信力が上がった結果であるようにも思います。
欧州市民のウクライナに対する支持がよく現れている出来事に、ユーロヴィジョン・ソング・コンテストがあげられます。この大会は、欧州を含め30カ国近くの国の代表歌手が歌い、審査員と聴衆からの投票で順位を決める歌の大会です。
ウクライナの代表は実際に戦場で戦っている兵士の歌手が戦場から一度引き上げて参加し、彼らはその後戦場に戻る予定でした。審査員票ではイギリスがリードしていましたが、聴衆の投票では圧倒的な差をつけてウクライナが優勝しました。この大会は、歌の素晴らしさは勿論ですが、戦場で戦う兵士の想い、ウクライナの方の想い、そしてそれを支える欧州市民の想い、多くの人の想いを届ける機会だったと感じました。 また東欧と英国に旅行で行った際も、ウクライナの戦争をより身近に感じる事がありました。
ウクライナに近い東欧に行くにつれて、街で見かけるウクライナの国旗の数が増えていくのです。特にチェコにおいては、チェコの国旗より遥かに多い数のウクライナ国旗を見かけたと思います。これは印象的な光景でした。
そして英国では、空港から市内に向かうバスの運賃がわからず、バス停で待っていた人に値段を聞いた所、「ウクライナから来ていて無料でチケットをもらい値段はわからない」との答えをもらいました。その時、私はThank youとしかいう事ができませんでした。本当は「私もあなた達を応援しています」、と伝えたかったのですが、咄嗟の出来事に上手く言葉が出てきませんでした。空港内に戻ると、バスのチケット売り場に「ウクライナwelcome」ブースがあり、そこで無料のチケットの手配が行われている様でした。日本ではウクライナから距離も遠く、戦争を身近に感じる機会は少ないかもしれません。それでも、今この時に戦場から発せられる声や、ゼレンスキー大統領のInstagramを追い続けて、自身がどう思うのか、何ができるのか、考え続けたいと思います。(次号につづく)

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