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2025年「友愛小論文コンテスト」韓国 延世大学校にて開催

延世大学校参加者と、友愛ユニオン青年代表団が揃って記念撮影
延世大学校の学生は、大学側から「参加証明書」を授与された
日韓の若者が一堂に会し、同じテーマで議論のテーブルに付き、ディスカッションを重ねて行くことは、友愛理念普及の実践であり、平和を目指す活動の一つとなる
友愛ユニオンから6名の青年代表団が訪韓
日韓の若者が抱える問題についてのテーブルディスカッション
5月16日(金)から18日(日)の3日間、鳩山由紀夫理事長を団長に、理事、評議員、そして友愛ユニオンから参加の6名と共に、友愛訪韓団が韓国ソウルにある、延世大学校を訪問。日韓の若者同志の交流会を実施した。これは「友愛小論文コンテスト」及び普及活動として実施されたプロジェクトで、3日間の短い時間ではあったが、有意義な交流が行われた。友愛ユニオンによる発表「私にとって友愛とは」(日本語・英語)及びテーブルディスカッションなど活発な交流の様子が展開された。参加の友愛ユニオンの感想文を掲載し、本プロジェクトの報告としたい。
他者との違いを受け入れる
浦 彩人
私にとって友愛とは、他者との違いを受け入れ互いに歩み寄ることで、大きな成果を出すことを可能にする心構えである。
韓国は日本とは隣国であるが、国境線を引いている以上、両者には価値観や文化に大きな隔たりが存在する。例えば韓国ではキムチに代表されるように、香辛料が多用された食文化であり、同じ保存食でも、漬物、味噌など塩分に重きを置いた日本食をよく食べる私たちには馴染みないものだ。
今回の延世大学校訪問は、そのような近くて遠い文化圏で、互いの違いを乗り越える友愛精神を伝播させる試みである。そして同時に、友愛精神を広めるために必要なものを考える重要な機会であった。
友愛精神を最も感じられたのは、今回の一番の目的である延世大学校学生とのディスカッション中であった。
少子化という日韓共通のテーマにおいて、互いの国における少子化原因を尋ね合うという、他者を知ろうとする友愛的な交流があった。
それに加えて、後半に意見をまとめる際には、学生側から少子化対策の結論に友愛精神を盛り込もうとする動きがあった。私たち友愛の青年代表から大学での企画に歩み寄る中で、向こう側からも財団の価値観に対する歩み寄りが起きたのである。
このような歩み寄りを可能にしたのは、異なる考えを受け入れる精神的な余裕と、その上で新たな価値観へ歩み寄るだけの好奇心を生み出す環境だろう。
ディスカッションを始めとした対話は、双方に議論する余裕があって初めて成立する。今回の延世大学校の生徒たちはとても聡明で、議論というなかなか骨が折れる作業をこなしながらも友愛精神に歩み寄るだけの余裕を持つことが出来たのである。
また、異なるものへの好奇心が無ければ、精神的余裕があっても情報を得ようとは動かない。今回のような友愛精神への歩み寄りは、常日頃から大学での活動に対し好奇心をもって打ち込んでいることに裏打ちされた行動であると私は考える。
以上の体験から、私は今回の訪韓を通じて、友愛を伝播させるためには、相手に精神的余裕を生み出し、そして好奇心を刺激することが必要であると感じるに至った。異なる文化圏に足を運び、異なる価値観と接する機会として、今後とも私たちの公益財団法人友愛による交流活動を積極的にサポートしていきたい。
友愛ユニオンとしての自覚が増した韓国訪問
成田 葵
最初にこの公益財団法人友愛を知ったのは、オーストリアでの研修がきっかけでした。おそらく、ほとんどのユニオンメンバーと同じように、当初は友愛への思いというよりも「オーストリアに行きたい」という気持ちから関わり始めました。
私は2期生としてオーストリアに派遣されたため、気づけば友愛に関わってから6年が経過しました。そして、今回の延世大学校との交流や、前回の千代田国際語学院との交流を通じて、改めて自分の中で友愛思想やこの団体について深く考える機会を得ました。
その中で、「自分は友愛財団を代表して派遣されているのだ」という実感とともに、これからも友愛ユニオンの一員として、この団体を支えていきたいという思いが強くなった研修でした。
そのように感じるようになった大きなきっかけは、青年代表メンバー全員による「私にとって友愛とは」のスピーチを何度か聞き、自分自身の考える友愛について向き合い、日本語・英語の両方で発表するプロセスを経験したことです。(写真左下)スピーチの内容は六人六様で、些細な対話を通じた人と人とのつながりから、複雑な関係の中での他者理解まで多岐にわたり、ユニオンメンバー一人ひとりの思いを知ることができました。
また、韓国の学生たちからは、今回のテーマであった少子化に直面する韓国と日本の課題や解決策について議論するだけでなく、私たちの友愛スピーチに対するコメントや、財団の活動への関心、さらには「友愛の思想に興味があったから参加した」との声もあり、とても印象に残りました。
社会人になってからも社会課題をテーマに議論でき、年齢や立場を超えて意見を交わせる場を提供してくれる友愛は、学生を卒業した時間が経過すればするほど、その価値を実感しています。このような貴重な機会をいただいているからには、今後は友愛ユニオンの一員として、この団体にどう恩返しができるのかを考えていきたいと思うことができた韓国訪問となりました。
共有する未来を見据えて
出倉正啓
「友愛」の青年代表として韓国を訪問するにあたり、事前に数回にわたり開催された勉強会で韓国の歴史や社会を事前に学び、準備を積み重ねてきた。その如実な成果としてディスカッションでは、予想通りのレベルの高い議論を行うことができた。それと同時に韓国社会が抱える社会問題=少子化社会の進展や競争社会の苛烈さを生々しく知ることができた。首都圏への一極集中、高等教育への進学プレッシャーおよび親の進学熱、学校教育の軽視と受験産業の興隆、よりよい企業へ就職したいという上昇志向、その全てが両国で共通する問題であるとともに、その度合いは韓国のほうがはるかに上回っていた。日本でも地方創生の話題が政治課題として登ることはあるが、韓国の首都圏一極集中は群を抜いたものであり、「よい就職のためにはソウルにある有名大学に行くしかない」という思想のもと、人口が首都圏に吸い寄せられているとのことであった。
私たちのグループでは、これら日韓に共通する課題について以下のような結論に至った。それは、「首都圏でよい暮らしをする」という理想像がSNSを通じて人口に膾炙した結果、みなが目指すために先述した社会問題が発生し、その結果として少子化に見舞われているということだった。この解決にはさまざまなことが考えられるが、先鋭化する社会風潮の変容、多様な価値観を認める風土、政府による子育てへの財政支出が必要なことは確かであろう。
今回の韓国訪問は、準備期間に非常戒厳・大統領罷免・大統領選挙戦が行われるというタイムリーな時期のものであり、ソウルでは選挙戦が繰り広げられる日常を垣間見ることもできた。進歩主義政党の新大統領のもと、現在の良好な日韓関係がどうなっていくかは様子見が必要だが、せめて若者世代だけでも、我々が延世大学校で行ったディスカッションのように共有する未来を見据えて行動することができれば、揺るぎない強固な関係を築くことができるのではないかと思う。それこそが「友愛」の体現であり、私はそれを望む。
最後になるが、韓国社会の実態を豊富な経験をもとにご講義いただいた堀山明子様に感謝を申し上げる。
多くの出会いと困難
小倉佑太
私は千代田国際語学院・延世大学校での友愛活動を通して、人と人との繋がりが友愛であるという思いをさらに強く感じることができました。また、それは友愛精神を育むにあたり最も大切なことであり、そしてそれを実践する難しさを痛感しました。と同時に今回の活動を通して私はたくさんの新たな人々との繋がりを得ることができました。その繋がりからさらに新しい友人や交流の輪が増え、現在では驚くほど沢山の方と親睦を深めることができております。
このように友愛の活動の神髄は無から有を生み出すことにあると思います。知りえなかった繋がりを友愛が生み出し、その繋がりが無限に広がる様子を目の当たりにした経験でした。
しかしこの繋がりを広げていくためには、自分自身だけではなく、それを伝える相手も友愛の精神を持つことが必要なのだと感じました。延世大学では友愛精神を伝える難しさを感じる場面もありました。友愛という漠然とした概念を言葉で言い表すことを、これまでも困難に感じておりましたが、今回の延世大学校との交流を通して感じたのは、友愛精神の土台となる部分のは「相手を知ろうとする気持ち」だと思いました。この気持ちがない状態では友愛を語ることも、繋がりを広げることも成しえないと痛感しました。
延世大学校でのプログラムでは当日急遽の時間変更等の影響もあり、この友情を育む時間や参加者同士での交流をする十分な時間がなかったため物足りなさを感じました。そして私が何より驚いたのは、プログラム後の友愛ユニオンの反省会にて多くのユニオンメンバーが同じような気持ちを口にしたことでした。同じ壁にぶつかり、何とも言えない不完全燃焼感を全員で共有することで共通の課題を見つけることができ、さらに次に繋がる目標も得ることができました。
こうしたことから今回の訪問は、ある程度の達成感と一定の悔しさを感じた、とても有意義な時間であったと思います。そして今後友愛活動の裾野を広げていくうえで必ず糧となる経験であると感じました。
今後も国を超えての交流を実践し、さらに多くの人々と知り合うことに私自身とても魅力を感じております。のみならず、友愛ユニオンメンバーの一員としても、より活動の幅を広げ友愛理念を伝えていくことができるよう尽力していく所存です。
生の声を聞く・相互理解の一歩
堆 美優
今回の韓国訪問にあたって、私たちは何度も勉強会を重ねてきました。その中で痛感したのは、韓国と日本のあいだには歴史認識に大きな隔たりがあるということです。だからこそ、私たち日本人は、韓国で育った方々が抱く歴史観や対日認識を、最初から否定したり拒んだりするのではなく、彼らがその考えに至った背景に想いを馳せ、理解し、寄り添う姿勢が必要であると学びました。
鳩山理事長は、日本が第2次世界大戦下で犯した過ちに対する償いを極めて重く受け止めておられます。今回の講演でも、日本が果たすべき歴史的責任を明確に語り、謝罪の意を示されました。このような姿勢を、かつて日本の総理大臣を務めた方が自ら示すことは、非常に大きな影響力を持つものだと感じます。自民党政権とは異なるアプローチをとる鳩山理事長は、日本国内では批判を受けることもありますが、韓国においてはその誠意ある姿勢が高く評価され、歓迎されていることに、私たちは現地での交流を通じて気づかされました。
私たち若者にとって大切なのは、こうした先人の姿勢から学び、過去の過ちを曖昧にするのではなく、今もなお相手の心に生きる記憶や想いに寄り添いながら、共生と友愛の道をともに歩もうとすることだと思います。
今回の訪問のメインイベントは、延世大学校の学生たちとのグループディスカッションでした。テーマは、少子高齢化という共通の課題について、日韓の若者がどのように向き合っているかというものでした。政府の政策に対する若者の率直な意見など、インターネットでは知り得ないリアルな声に触れることができ、非常に興味深い時間となりました。
たとえば、韓国政府が主催するマッチングイベントについて、多くの学生が「現実味がなく、やや滑稽に感じる」と話していたのが印象的でした。また、教育に関する話題では、韓国における学業へのプレッシャーが日本以上に厳しいことが語られました。特に印象的だったのは、「ヘリコプター母」という表現です。これは、母親が子どもの教育に過度に関与し、常に監視する様子を表す韓国特有の言い回しです。グループの学生たちは、自分の母親がまさにそうだったと語り、将来自分自身もそうなりそうだと笑いながら話していたのがとても印象に残りました。
このように、共通の課題について日韓の若者が率直に語り合い、お互いの価値観や社会背景への理解を深めることができたことは、今後の協力関係や相互理解の土台となる大きな一歩になったと確信しています。
この貴重な機会を与えてくださったすべての皆様に、心より感謝申し上げます。今後も友愛ユニオンの一員として、友愛の精神を世界に広げていけるよう、努力を重ねてまいります。
若者同士の共通項
吉田大志
延世大学校でのテーブルディスカッションを通して、私は「大企業に入りたい」、「30歳までに結婚したいが、仕事にも力を入れたい」、「卒業後は故郷に戻りたいが、スキルに見合った収入の得られる仕事がない」、「20代は独身の自由を楽しみたい」、「教育費が高いため、たくさん子どもを持つのは難しい」、「政治には関心がなく、政府の若者支援策は機能していない」など、多くの率直な意見を延世大学校の学生から聞くことができました。
これらの声に、日本の若者として強く共感しました。彼らとのディスカッションは、まるで日本の同年代と将来や政治について語り合っているかのような感覚であり、「日韓の若者の価値観の差異は、もはや存在しないに等しい」というのが率直な感想でした。
日韓の若者の意見や価値観が共通していることは、両国が歴史的に中国文化の影響を強く受け、その後20世紀以降はアメリカ主導の資本主義・自由主義経済圏に属してきたという背景と関係があると感じました。日韓の若者は、世間体や親の期待に応えつつも、自分らしい人生を自由に生きたいという思いとの狭間で揺れ動いています。延世大学校の学生たちもまた、私と同様の葛藤を抱えていることがわかり、私は彼らに強いシンパシーを感じるようになりました。
また、日韓の若者が共通して持つ資本主義・自由主義的な価値観が、「都市への一極集中」や「少子化」といった両国に共通する社会問題の一因であることを改めて認識しました。私の母校一橋大学の後輩も、延世大学の学生たちも、学業に励み、程度の差こそあれ、卒業後は高給が期待される都市部の大企業への就職を目指しています。大企業で裁量を持つには出世が最も確実な方法であるため、男女問わずキャリアアップに意欲的です。特に、これまで出産・育児の担い手とされてきた女性が仕事を優先するようになったことで、少子化が一層加速しているのではないかと感じました。
韓国訪問の最終日には、北朝鮮との国境近くにある非武装地帯(DMZ)を訪れ、人生で初めて北朝鮮の風景を目にしました。そのときふと、「北朝鮮の若者は日本についてどのような印象を持っているのだろうか」、「私たちは彼らとも共感し合える日が来るのだろうか」と思いを巡らせました。朝鮮半島が平和的に統一され、私たちが自由に北朝鮮へ渡航できるようになり、日本と北朝鮮の若者が両国の未来について語り合える日が来ることを心から願いながら、帰路につきました。
延世大学校前にて
全員さあこれからの活力が鳩山由紀夫理事長は、延世大学校創立140年記念の基調講演を
交流会の会場 テーブルディスカッションは英語で行われました
前夜、ホテルの一室に集まり、スピーチの最終仕上げ。皆真剣
鳩山由紀夫理事長は、各テーブルを廻り、言葉を交わしていた
鳩山由紀夫理事長は、各テーブルを廻り、言葉を交わしていた
交流会の司会進行を担当した後藤大智理事。何と全て韓国語で!
友愛ユニオンメンバーは、5回に亘る勉強会を経て今回の訪韓に臨みました。課題図書6冊を読みこなし、テーマを議論し、今の韓国を知るために韓国在住の記者・堀山明子さんからwebで講義の時間をいただきました。貴重なお話を沢山伺うことができました。お世話になった堀山明子さんと、直接お目にかかることができました。